1.Explorerへようこそ!
ソフトウェアシンセサイザー - Explorerをダウンロードいただき、
ありがとうございます。
Explorerにウェーブテーブルエンジン、エフェクトは搭載されていませんが、
ウェーブシェイパーや、フェーズ・リングモジュレーション、オシレーター毎に設定できる強力なユニゾン機能、ほぼすべてのパラメーターへアクセスできるモジュレーター群等、人気のシンセサイザーに劣らない機能を有しています。
また、それぞれのモジュールは、模範的なアルゴリズムに従って設計されています。教本を片手に、これからシンセサイザーを学びたいというニーズにも応えることができるはずです。
数は少ないですが、プリセットもご用意しています。
それでは楽しんでください。
Fabric 70 - Ken Ito
2.フロー
Explorerは、Envelope x 3、LFO x 3、
Oscillator x 4、Filter x 1、Output x 1によって構成されます。
ノートオンの契機で、Oscillator 1 - 4はオーディオ信号を生成します。
生成された信号はFilter、Outputを経由して、実際の音波として出力されます。
初期状態では、Oscillator 1 - 4はFilterと接続されていますが、点線で示すとおり、直接、Outputへルーティングすることもできます。
Output Envelope、Envelope 2、3、LFO 1 - 3は、オーディオ信号そのものではなく、Oscillator 1 - 4やFilter等、他のモジュールのパラメーターを時間的に制御するためのものです。これらは、任意のモジュールへ自由に接続することができます。
3.セットアップ
本ウェブサイトからExplorerをダウンロードしてください。
http://fabric70.com/explorer.html
Mac
Audio Unitsとしてお使いいただく場合、
Explorer.componentを以下のパスへ移動、またはコピーしてください。
~/Library/Audio/Plug-Ins/Components/
VST3としてお使いいただく場合は、Explorer.vst3を以下のパスへ移動、またはコピーしてください。
~/Library/Audio/Plug-Ins/VST3/
Windows
Explorer.vst3を以下のパスへ移動、またはコピーしてください。
C:\Program Files\Common Files\VST3.
プリセットをご用意しています。お使いいただく場合、ダウンロードフォルダーに同梱されているPresets/Fabric 70/Explorer(Windowsの場合、VST3Presets/Fabric 70/Explorer)以下を任意のディレクトリーへ移動、コピーしてください。
これで準備は整いました。あとはDAWを起動して、インストゥルメントトラックにExplorerをインサートしてください。
4.リファレンス
Explorerのセクション = モジュール毎に搭載されている機能について解説します。
4.1.Oscillators
音源となるセクションです。
Explorerは4つのオシレーターを備えています。
4.1.1.パラメーター
Power
電源です。オフのときは機能しません。
Waveform
Oscillator 1 - 3は共通です。
以下、4つのタイプから選ぶことができます。
Sine
正弦波とも呼ばれます。倍音のない波形です。
Triangle
Squareと同様に奇数次倍音を含むものの、その量は少ない波形です。
Sawtooth
すべての倍音を含むため、本ソフトウェアのようなサブトラクティブシンセシスにおいて、最も使用頻度の高い波形です。
Square
奇数次倍音を含む波形です。Waveshaper - Phase Distortionを用いることで、デューティー比を変えることができます。
Oscillator 4はノイズ出力専用で、
以下、2つのタイプから選ぶことができます。
White Noise
あらゆる周波数成分を同等に含むノイズ波です。
Pink Noise
周波数に反比例し、高い周波数の音ほど弱くなるノイズ波です。
Transpose
オシレーターのピッチを制御します。±1で半音、±12で1オクターブです。
Phase
オーディオ信号の開始角度を制御します。
Waveshaper
オーディオ信号の形状を変化させるウェイブシェイピング機能の設定です。
Waveformは4つですが、本項と次項のオシレーターモジュレーションを使うことで、様々な音を作り出すことができます。
以下、5つのタイプから選ぶことができます。
Basic
1サイクルあたりのオーディオ信号に対して、その中心から左、右をそれぞれ逆の方向に曲線状の形状変化を与えます。
Synchronize
一般的にオシレーターシンクと呼ばれるもので、
本来は、オシレーターの周波数を、別のオシレーターに同期させることによって基本波形を捻じ曲げ、強烈な音色変化をもたらしますが、本ソフトウェアでは、演算によって1つのオシレーターのみでその効果を得ることができます。
Phase Distortion
位相の2点間の角度を変えることにより、形状変化を与えます。
Stretch
1サイクルの波形を生成するために必要な位相角度を減らします。あまりとなる位相角度に対してはオーディオ信号を生成しません。そのため、波形が伸縮したような形状変化を与えます。
Flip
しきい値をオーバーする位相角度を減算することで、切り込みを入れたような形状変化を与えます。
Shape
形状変化の効果を制御します。
Modulator
他のオシレーターから出力されたオーディオ信号を利用 = 加算、乗算するオシレーターモジュレーション機能の設定です。
以下、2つのタイプから選ぶことができます。
PM = Phase Modulation、RM = Ring Modulationを意味します。
PM Oscillator n
フェーズモジュレーションです。
オーディオ信号が生成される前の位相角度に、他のオシレーターで生成されたオーディオ信号を加算することで変調効果を与えます。
RM Oscillator n
リングモジュレーションです。
オーディオ信号に対して、他のオシレーターから生成されたオーディオ信号を乗算することで変調効果を与えます。
Modulation
モジュレーションの効果を制御します。
Voices
ノートオンと共に発音する数を制御します。
後述するWidth、Detuneと併用することで、音に広がりや厚みを与えることができます。
例えば、Oscillator 1がVoices : 2、Oscillator 2がVoices : 4のときにノートナンバー : C3のキーを押すと、2つのOscillator 1と、4つのOscillator 2が、C3を発音します。
Randomize
オーディオ信号の開始角度が不規則にズレる範囲を制御します。
Voicesによって複数発音されたオーディオ信号の開始角度が揃っていると、
音量が大きくなるだけで、期待する効果は得られません。
また、本パラメーターを使用せず、Detuneのみによるユニゾンは、複数発音されるオーディオ信号のピッチが異なることにより厚みは生まれますが、発音直後に大きなうねりが生じてしまいます。この場合も、波形開始角度が揃っていることが原因です。本機能はこれらを回避する有効な手段となります。
Width
オーディオ信号のステレオ幅を制御します。
本パラメーターも複数発音された波形の開始位置が揃っていると効果を発揮できません。Randomizeとの併用が前提の機能になります。
Detune
複数発音されたオーディオ信号毎のピッチのずれ量をコントロールします。本パラメーターが最大値のときのずれ量は、前項のRangeの設定に従います。
Pan
音の定位を制御します。
0.5でセンター、0で左チャンネルのみ、1で右チャンネルのみの出力になります。
Level
オシレーターの出力レベルを制御します。
最終的なオーディオ信号の出力レベルはOutpuセクションが担当するため、本機能の役割は、他のオシレーターとの相対的な出力レベルの調整です。
4.2.Filter
Oscillatorで生成されたオーディオ信号から不要な帯域をカットしたり、特定の帯域を増減することで目的の音を作り込むためのセクションです。
4.2.1.パラメーター
Power
電源です。オフのときは機能しません。
Oscillator n > Filter
オシレーター毎にフィルターセクションを経由するかどうかを選ぶことができます。
オフにしたオシレーターのオーディオ信号は、本セクションをスキップして、Outputセクションへダイレクトに送られます。
Filter Type
以下のタイプから選ぶことができます。
LP 12dB
LP 24dB
ローパスフィルターです。
カットオフ周波数より高い信号成分を減衰させます。
BP 12dB
PB 24dB
バンドパスフィルターです。
カットオフ周波数の周囲の帯域に入る信号成分を通過させて、この周波数帯より高い信号成分、低い信号成分を減衰させます。
HP 12dB
HP 24dB
ハイパスフィルターです。
カットオフ周波数より低い信号成分を減衰させます。
Notch 12dB
Notch 24dB
ノッチフィルターです。
レゾナント周波数付近の狭い帯域を減衰します。残りの信号が受ける影響を最小限に抑えます。
Peak 12dB
ピークフィルターです。
レゾナント周波数付近の狭い帯域を増幅します。残りの信号が受ける影響を最小限に抑えます。
Allpass 12dB
オールパスフィルターです。
入力信号のカットオフ周波数付近の位相のみ変化させます。
Low Shelf 12dB
カットオフ周波数より低い帯域を指定された量だけ増幅、減衰します。
High Shelf 12dB
カットオフ周波数より高い帯域を指定された量だけ増幅、減衰します。
Comb +
Comb -
コムフィルターです。
オリジナルの信号と、遅延させた信号の1つまたは複数のコピーをミックスします。
一部の周波数ではこれらの信号が合わさることで位相の打ち消しが生じ、それ以外の周波数では強調が生じます。この結果、レゾナントピークが複数ある、尖った周波数スペクトルになります。
Comb +はディレイライン上の正のフィードバックを使用します。一方、Comb -は負のフィードバックを使用します。
Drive
オーディオ信号のレベルを制御します。
本セクションはソフトクリップ機能を有しており、オーディオ信号を増幅させることで、自然な歪み効果を得ることができます。
Backward
ソフトクリップのプロセスを実行する順序を制御します。
オフ : ソフトクリップ -> フィルター -> Outputセクションへ
オン : フィルター -> ソフトクリップ -> Outputセクションへ
Driveをかけたときに、より強い歪みが欲しいときにオンにします。
Keyfollow
オンにすると、Cutoffがノートナンバーに追従します。
Cutoff
カットオフ周波数を制御します。
Comb +、Comb -が選択されている場合、ディレイタイムを制御します。
Resonance
Cutoff周波数付近の帯域のレベルを制御します。
Notch、Peak、Allpassが選択されている場合、効果を与える帯域の幅を、Combが選択されている場合、フィードバック量を制御します。
Gain
特定の帯域のレベルを制御します。
Peak、Low Shelf、High Shelfで使用します。
Peak >> Cutoff付近の帯域を増幅、減衰します。
Low Shelf … Cutoffより低い帯域を増幅、減衰します。
High Shelf … Cutoffより高い帯域を増幅、減衰します。
PeakではCutoff付近の帯域を、Low ShelfではCutoffより低い帯域を、High ShelfではCutoffより高い帯域を増幅、減衰します。
Mix
フィルター処理された信号とオリジナルの信号のミックス比を制御します。
4.3.Output
音声信号のレベルをコントロールするセクションです。
4.3.1.パラメーター
Level
出力される音声信号のレベルをコントロールします。
4.4.Information
バージョン情報表示の他、初期化を担うセクションです。
4.4.1.パラメーター
Init
本ソフトウェアの設定を初期化します。
Information
本ソフトウェアのバージョンを表示します。
4.5.Controller
ピッチベンドやベロシティ、コントロールチェンジ等のMIDI情報を受信した際の振る舞いを決定するセクションです。
4.5.1.パラメーター
PB +
ベンダーを上方向へ操作したときに変化するピッチの最大値です。
PB -
ベンダーを下方向へ操作したときに変化するピッチの最大値です。
Velocity
オンのとき、ベロシティによるモジュレーションが有効になります。
Aftertouch
オンのとき、アフタータッチによるモジュレーションが有効になります。
CC#
コントロールチェンジからモジュレーションする場合、本パラメーターでコントロールナンバーを指定します。
Control Change
オンのとき、CC#で設定したコントロールナンバーからのコントロールチェンジによるモジュレーションが有効になります。
4.6.Glide
MIDIのコントロールチェンジのひとつである、グライド機能を扱うセクションです。
4.6.1.パラメーター
Oscillator 1 > Glide
Oscillator 2 > Glide
Oscillator 3 > Glide
オシレーター毎にグライドを有効にするかどうかを決めます。
Mode
グライドのモードを2つのタイプから選択できます。
Alwaysの場合、常にグライド効果があり、Legatoの場合、ノートオンが連続したときにだけグライド効果が発生します。
4.7.Voicing
モノフォニックモードへの変更や発音数、全体のピッチを設定するセクションです。
4.7.1.パラメーター
Monophonic
オンのとき、Sensuouはモノフォニックシンセサイザーとして動作します。
Legato
Monophonicがオンのときに使用します。この設定が有効な状態で、ノートオン中に別のノートオンが発生した場合、EnvelopeやLFOのリセット等、リトリガしません。
Voices
同時に発音できる最大数を制御します。
Transpose
オシレーターのピッチを制御します。±1で半音、±12で1オクターブです。
Range Of Detune
Detuneが最大値のときにずれるピッチの範囲を制御します。
4.8.Envelopes
ノートオンからの時間経過に伴う定型的な変化を、
パラメーターへ付与するセクションです。
Output EnvelopeはOutputセクションと直結しているため、出力音量はOutput Envelopeの設定に従います。
4.8.1.パラメーター
Power
電源です。オフのときは機能しません。
Delay
ノートオンからエンベロープがスタートするまでの時間をコントロールします。
Attack
エンベロープがスタートして、最大レベルに達するまでの時間をコントロールします。
Hold
Delay、Attackを経由してDecayに移行するまでの間に最大レベルを維持する時間をコントロールします。
Decay
最大レベルからSustainに到達するまでの時間をコントロールします。
Sustain
Decayを経由したあとのノートオン中に維持されるレベルをコントロールします。
Release
ノートオフからレベルがゼロになるまでの時間をコントロールします。
Sensitivity
エンベロープの出力レベルにベロシティを適用します。
Level
エンベロープの出力レベルをコントロールします。
Envelope Shapers
Attack、Decay、Releaseの時間経過に伴うエンベロープの増加、減少の変化量をコントロールできます。0%のときは直線的ですが、割合が+に向かうにつれて内側に、-に向かうにつれて外側に膨らむ曲線的な時間変化を与えることができます。
4.9.LFOs
低い周波数の信号により、定型的な変化をパラメーターへ付与するセクションです。
4.9.1 パラメーター
Power
電源です。オフのときは機能しません。
Waveform Type
以下、7つのタイプから選択できます。
Sine
サイン波です。
Triangle
三角波です。
Trapezoid
台形状の波形です。
Ramp Up
右上がりの直線波形です。
Ramp Down
右下がりの直線波形です。
Pulse
パルス波です。Pulsewidthを使用することで、比率を変化させることができます。
Random
1サイクル毎にランダムな値を出力します。
Pulsewidth
Waveform TypeからPulseが選択されているとき、幅を制御します。
Frequency
LFOの周波数を制御します。後述のSynchronizeがオンの場合、DAWのBPMに対する割合で周期を制御します。
Rise
ノートオンからLFOの振幅が最大になるまでの時間を制御します。
Level
オシレーターの出力レベルを制御します。
Reset Point
ノートオンの伴うLFOから出力される信号の開始角度を制御します。
後述のResetがオンのときに有効です。
Amplitude Type
LFOの振幅の範囲を、
以下の2つのタイプから選ぶことができます。
-1 to 1
LFOの振幅が正負となります。
0 to 1
LFOの振幅が正のみとなります。
Reset
オンの場合、ノートオンの契機でLFO信号位相角度をリセットします。
Synchronize
オンの場合、FrequencyからDAWのBPMに対する割合で指定できるようになります。
5.モジュレーションしてみよう
ここでは、VelocityやAftertouch、CC#、Envelope、LFOのモジュレーターを、パラメーターへアサイン >> モジュレーションする方法について解説します。
Exprorerは以下、11のモジュレーターを搭載しています。
Velocity
Aftertouch
Controller 1
Controller 2
Controller 3
Output Envelope
Envelope 2
Envelope 3
LFO 1
LFO 2
LFO 3
これらのモジュレーターをパラメーターへ割り付けることで、
時間的変化を与えることができます。
手順は簡単です。割り付けたいパラメーターにマウスポインターを移動したら、右クリックからポップアップメニューを表示させてください。
Explorerでは1つのパラメーターに、
最大2つのモジュレーターを割り付けることができます。
練習にOscillator 1のTransposeでポップアップメニューを表示して、Assign #1からEnvelope 2を選んでみましょう。
Transposeの下部にあるLEDが青く光りました。これはEnvelope 2が割り付いたことを示しています。
次にこのLEDをクリックするとモジュレーション量を調整するスライダーを表示できます。12に変更しましょう。これで、Envelope 2からのモジュレーションによって、最大1オクターブ増加するようになります。
最後にモジュレーションソースとなるEnvelope 2の設定です。
PowerをオンしたらAttackを1000msに。これでノートオンの契機で1秒かけてOscillator 1のTransposeが1オクターブ上昇するはずです。